【続】やってあげるの罪
今日は、3年前に書いたある記事「やってあげるの罪」について、
書いてからの3年間の経験をもとに、ブラッシュアップして、書きたいと思います。
【続】やってあげるの罪
です。
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わたしは職業柄でしょうか、頻繁に
弁護士、司法書士、税理士、社労士、そして行政書士といった職業の人に会います。
いわゆる"士業"という方々ですね。わたしもその端にいます。
そして、時折、耳にする言葉。
それが「やってあげる」です。
わたしが、フリーターから、事務所勤務経験なしでこの業界に入ってきたからでしょうか。
違和感がある言葉です。
別に原則論や良い子論を展開したいわけではなく、直感に近いものなのですが、どうも違う気がするんです。
士業間で話をしているとき・・・
「この間、ある社長さんの相談に”乗ってあげた”んですけどね」
「この間、ある会社さんに頼まれて、◆◆“やってあげた”んだけど」
「◆◆の手続を“やってあげた”時、★★になっちゃって」
こういう具合です。
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士業というのは、いつもじゃないですが、先生と呼ばれることがある職業。
資格者数が制限され、かつ、報酬が所属団体※で、決められていた時代がありました。
※行政書士会、税理士会、弁護士会等。
今は激しい競争社会になっていますが、そうでない時代があったわけです。
士業が一定の「社会的な制度」として組み入れられていた時代、といっても良いと思います。
これらの名残なのでしょうか、特に60代以降の士業とお話する折に出てくる言葉です。
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「やってあげる」とは、「上から下に何かをする」の意味合いがあると思います。
お金をいただいているのは、顧客です。
「させていただく」というのが、適切な表現だと思うんです。
こう書くのは、良い子ぶるってわけではありません。
ただ、表現をどうのこうのではないです。
文字にすると難しいな・・・。
「させていただく」というのが志向であり、その結果として、にじみ出る表現が「させていただく」。
顧客となる方をどう思っているのか、基礎的思想というか。
これが関係している気がします。
もう一つ、関係していると思うので、書かせてもらいます。
ずばり、弊社は、顧客第一主義ではありません。
そして、お客様は神様ではありません。
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『お客様は神様です』という言葉。
実はこの表現。
高度成長期時代、三波春夫という歌手が、観衆を前にした言葉が流行語になったもの。
目の前の観衆(お客様)を「神」だと思って歌いなさい、という意味でした。
これが一般流行語になって、なぜか、顧客第一主義の代名詞のようになってしまったものです。
ドラマで観たことありませんか?
レストランで苦情を言う客が決まって口にする台詞。
「お客様は神様だろう!客が言うことを聞けないのか!」。
弊社は、顧客第一主義ではありません。
経営理念は「嬉しいを紡ぐ」。
理念の説明ページはこちら↓
http://e-jimusho.com/rinen.html
これって、ありきたりと思いますか?
でもね、役員の中で、何度も変更され、今後の案として職員へ提案して、みんなで一生懸命、考えたんです。
嬉しいを紡ぐためには、顧客が嬉しいと思うと同時に、他も嬉しいと思わなければ、成り立ちません。
顧客の社長さんはもちろん、社長のご家族、従業員、従業員のご家族が嬉しいと思う状態を目指します。
また弊社自身も継続するうえで嬉しい状態(適正な利益を上げ、組織が存続してゆく)でなければなりません。
何より大きいウェイトを占めるのは、弊社で働く「職員が嬉しいと思うこと」。
すべてを満たすための活動って、難題です。
弊社の理念の話はこのくらいにして・・・
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今までの文章を読んでくださった方の中には、「?」が出てきた方がおられるかもしれません。
「させていただく」という志向を持ちながら、顧客第一主義ではない。
ジレンマですね。
普通、「させていただく」という表現は、「顧客第一主義」に結びつきやすい。
でね、あくまでも、わたしの感覚なのですが、
顧客第一主義は、少なくとも士業の場合、マイナスに動くと思っています。
というのが、依頼されることのほとんどのケースで、法律が関係します。
わたしの場合は、会社法、民法、建設業法、産業廃棄物関連の法律、著作権法、不正競争防止法などなど。
顧客にとって不利な内容でも、告げなければならないことがあります。
告げなければ、顧客、士業ともに不幸になってゆくと思います。
この点が、物の売り買いとは、ちょっと違うのかなと思います。
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お客様は神様です、という論旨に従って、顧客のおっしゃるがまま進めると、違法となるケースがあるでしょう。
国家機関による摘発となれば、顧客はもちろん、士業の側も、刑罰を受けることになります。
と書くと、国家機関と同じベクトルを持つように見えてしまいますが、士業はそうではないと思います。
顧客の希望が法律に沿っている限り、顧客のために、国家機関との間を取り持ち、時には、顧客にために闘う職種だと思います。
国家機関の現場レベルの横暴を阻止するのも、士業の役割の一つかとも思います。(話が大きくなってしまいますね・・)
この辺、わたしは結構、シビアです。
ただ、確実にグレーはあります。
経営をする以上、グレーを否定はできません。
わたしもそうです。
ホワイトにした途端、経営破綻したら、目も当てられません。
でもね、グレーをホワイトにする努力、少なくとも方向性を持つことは必要です。
ホワイトにする努力をすることが、事業のリスクを軽減させ、安定につながります。
このグレーの「黒」の部分を、いかに「白に近いグレー」にしてゆくか。
わたし、そして職員は、これを考え、いつも闘っています。
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士業は、国家機関が「その解釈はAだ!」ということを、法律上「Bの可能性」があれば、顧客のために「いや、Bだ!」と主張してゆく職業です。
Bを認めてもらうために、あらゆる手段を考え、策を講じるのが士業だと思うんです。
当然、国家機関との良好な関係も必要なのですが、それ以上に必要なのが、
顧客のために「Bだ!」と胸を張る強さだと思うのです。
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どんどん脱線してゆきそうなので、元に戻します。
「させていただく」という志向を持ちながら、顧客第一主義ではないというジレンマについて。
わたしは、どんな状況であっても、「やってあげる」と口に出てしまうということは、上から下への意識の現れだと考えます。
たぶん、ですが、前述の「Aだ!」「いやBだ!」ということを考える以前の問題。
目の前にいらっしゃる顧客が、神様なのか、そうでないのか、意識そのものをしていない結果と言えるかもしれません。
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表現難しいな・・・。
たぶん「やってあげる」と言う士業は、
国家機関が「その解釈はAだ!」ということを、たとえBの可能性があったとしても
「そうですね、Aですね。依頼者を説得しますよ~」
という風になるんではないかと。
完全に、国家機関とベクトルを同じくする。
とっても危険だし、顧客は不幸です。
上からの目線をする人は、更に上の人には、従順になってしまう傾向があります。
士業にとっての国家機関が上とは思いませんが、そう思って、従ってしまう人は、世の中に存在すると思うんです。
『国家機関とベクトルを一致』させる人。
上から見る人は、顧客の見ている景色を共有できない、話を聴くことのできない形と言えようかと思います。
顧客にとって、士業にとって、これ以上の不幸はありませんね。
信頼して任せたのに、結果は玉虫色。
納得したような、しないような・・。
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「やってあげる」の罪は、
その表現の結果ではなく、にじみ出る何か、根底にある顧客への在り方が、大きく関わっているのではないかと思うんです。
あくまでもわたし個人の考えですが、そうおもうのです。
弁護士、司法書士、税理士、社労士、そして行政書士といった職業の
「やってあげる」を聞いたときの違和感。
それは、
たとえ顧客第一主義を掲げていても、顧客のために闘うことはしないんじゃないか?
たとえ身内的(士業同士の話)の話であっても、そこに上から下への目線が価値観に残っているということは、その事務所で働く人は大変なんじゃないか?
こういう疑念が心のどこかに湧いてくるから。
この辺にあるのかな、と思いました。
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わたしがどうのこうの言っても、せんなきことです。
時代とともに、業界も変わってゆくでしょう。
変わらざるを得ない。
ただ、わたしは・・・
・「させていただく」という言葉が自然と出てくるような経営をし
・顧客第一主義ではない経営をしながら
・顧客のために闘う士業
であり続けたいなと思います。
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